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第1部 二章【闇メン】その1 第三話 風変わりな面接

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-10-09 13:02:02

3.

第三話 風変わりな面接

 面接当日。約束の時間は朝の9時だ。リクルートスーツに着替えて、まずは8時から開いてる駅中の床屋に行って散髪する。そんなに伸びてもいなかったが今から面接を受けるのならそれは当然の礼儀である。そういうことをおれはしっかり分かっていた。

「お兄さん、まだそんなに伸びてないようだけど。髪型変えるのかい?」

「いえ、このままでいいです。ただ整髪してください。今からバイトの面接なんです」

「あんた真面目なんだねえ。今どきの子では珍しいよ」

「これを落ちたらまた探さないといけない。二度手間が嫌いなだけですよ」

────

「よし! バッチリだ。自信持って面接行っておいで!」

「ありがとうございます」

 おれは綺麗に整えてもらうと時刻は8時33分。待ち合わせ場所に向かうのに丁度いい時間だ。

 駅前にもう何十年も前から変わらずあるアイスコーヒーが美味い喫茶店『えにし』で待ち合わせ。

 おれはえにしの扉を開けた。この扉には鈴が付いていてその鈴の音が独特で、密かにおれはここの扉を開けるのが好きだった。

カロンカロン

「いらっしゃいませ」

 入ってみると客席にはかなり渋い40代後半くらいかなというおじさんが1人いた。カウンターには50代くらいの二代目マスター。その奥の住居スペースには女性が座椅子に座っていた。テレビでも観ているのだろうか。少し音が聞こえる。

 客席に目をやった。

(この人が渡邉さんかな? 雰囲気はあるが、でもまだ8時40分だし着いてないだけの可能性もあるな)と思ったが

「早かったな。椎名さんだろ?」と話しかけられた。

「あ、ハイ。渡邉さんですか? 初めまして、椎名です」

「はい、初めまして。マスター、アイスコーヒー2つ」と渡邉さんは指を2つ立てて注文した。

「アイスコーヒー2つですね。ありがとうございます」

「ここはアイスコーヒーがとくに美味いんだ。今日は少し寒いけどせっかくだから飲んでみてほしい」

「あ、ありがとうございます。……でも実は知ってました。僕もここのアイスコーヒーが大好きでして」

「なんだそうか! 椎名さんもかい。分かってるじゃないか! おれはもうここのアイスコーヒーを飲むために面接場所をここにしてるまであるんだよ」

「何で僕が椎名だって分かったんですか? 待ち合わせ時間にはまだ余裕があったと思いますが」

「なに、電話の印象と服装と髪型が一致したからな。あの感じだときっと20分前には来るタイプだと思ってさらに早く来ておいたのさ。ここまでは読み通りだ……。じゃあ履歴書出して」

 昨日の電話では履歴書を持ってくることなどは言われていない。だが……

「はい」

 それも用意してるのがおれである。

「やっぱり持ってきてたな。丁寧な言葉遣い。20分前集合。前もってきちんと整えた黒髪。リクルートスーツ。言われなくても用意してある写真付きの履歴書。ここまでは完璧だ」 

 そんなにたくさん試されてたのか。就職って大変だな、と思った。

「アイスコーヒー2つお待たせしました」

 マスターの娘だろうか。店の奥の住居スペースにいた若い女性がエプロンをつけていつの間にかホールで働いていた。

「いただきます」

 美味しい。ブラックのままいける。

 半分くらい飲んだらミルクを入れてまた飲んだ。

 最後はガムシロップも入れて。どの飲み方にしても美味しい。

「飲んだら場所を移そうか。次は牌を使っての面接だ」

 どうやら一次試験は合格したらしい。次は実技という事だろうか。

「マスター。奥使わせてくれ」

「分かりました。久しぶりですね奥まで行く人が来てくれたのは」

「まぁな」

 店の奥に謎の引き戸が『えにし』にはあった。レンタルスペースと聞いていたがそこを使用してる様子は見たことがない。

 スーー。と戸を引くとそこにはポツンと一台の麻雀卓が置いてあった。

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